一生モノのキーボード、HHKB

一生モノのキーボード、HHKB

最近よく、キーボードは何を使っているのかと聞かれることがある。おそらく私の職業が文字をたくさん入力する仕事だし、なんかそのあたりすんごくこだわってます、という雰囲気を知らず知らずのうちに、いやむしろあえて醸し出しているからだと思う。

キーボードは昔から大好き。こどもの頃からピアノを10年以上も習っていたし(雰囲気でやってたから身にはならなかったが)、おなじくらいの頃から家のデスクトップPCのキーボードも叩いていた。盛大に叩きまくっていた。たぶんピアノよりも100倍叩いていた。

私は1988年(昭和63年、早生まれだから62年の人たちと同じ)生まれなわけだけれど、私が小学生の時に極一部のネットキッズの間で流行っていたのが、「ふみコミュニティ」略して「ふみコミュ」という女の子向けのWebサービス。掲示板やチャットなんかがあって、当時のアングラ文化だったインターネットに集いし女の子たちがこっそりとオンラインのつながりを楽しんでいたWebコミュニティだ。

なんだか気になって数年前まで時々検索したりしていたのだけれど、2017年くらいまでは存在していたようだ。

話は逸れたが、とにかくその「ふみコミュ」での密かなる交流をはじめ、サイトやブログの制作、謎小説の執筆(当時ハリーポッターの新刊が出るたびにその続編を妄想して書いて公開していた。ファンは友人一人。)、e-typingなどのタイピングゲームに日々勤しんでいたわけだ。

だからこそ私はこの「キーボード」に並々ならぬ愛着、いや執着がある。

これまでのキーボード遍歴はこう。

大学生のうちは「こだわりはないが自慢できるビジュアルのもの」、大学生後半は「かわいいもの」、就職してからは「おしゃれなもの」、ライターになってからは「シンプルでかっこいいもの、もしくはMac」、そして今は「HHKB」だ。

「HHKB」はこうも言い換えられる。

「無骨」「ミニマル」「レトロ」「ダサい」「癖が強い」「変態配列」「打鍵感」「ステテテテ」「愛好家が多い」「マニア向け」「高価」

まずこのキーワードを聞いて「なるほどこれはよき」と思った方は何も言わずにAmazonかビックカメラあたりでポチっていただきたい。おめでとう。ウェルカム。

「なにを言っているのだ」と思った方は、まぁまずは私の話を聞いてくれ、ここからが大事なんだ。

購入時はシフトキーやエンターキーの色がグレー。すべて統一するため後日海外からキートップを個人輸入した。

まずこのビジュアルを見てほしい。なんともレトロだ。そして無骨。「ミニマル」とあるが、どこが?と思うだろう。まぁでもそれは一旦、一旦隅に置いておいていただきたい。もはや「レトロ」「無骨」を通り越して「ダサい」まである。そんなところがまたイイ!と思える時が必ず来るので一旦それについても隅に置いておいていただきたい。

レトロな見た目

ちなみに今更だけれど「HHKB」は『ハッピーハッキングキーボード』のことだ。「冗談だろ」と思ったそこのあなた。これは冗談ではない。全くもって真顔である。私も最初兄の口から「ハッピーハッキングキーボード」が飛び出した時は笑った。その後口を紡いだ。「マジで?」と思った。まぁでもそれについてもそんなところがまたイイ!と思える時があなたにもきっと訪れるはず。私は今や「HHKB」なんて甘っちょろい名前では呼ばない。あえて声を大にして「ああハイハイ、ハッピーハッキングキーボードね!」と正すくらいにはHHKBカーストの上層にいるのだ。

さあみなさんもご一緒に、「ハッピーハッキングキーボード」

とにもかくにも、いくつかの種類がある中から私が選んだHHKBは「英字配列」「無刻印」「Bluetooth」のもの。この理由はまさに先ほど隅に置いておいた「ミニマル」だ。

「ミニマル」の意味は、「無駄のない」「最小限の」と言った意味合いだと思っているが、HHKBの英字配列の無刻印Bluetoothモデルはまさしくそれそのもの。ぱっと見はなんとも鈍臭そうな古(いにしえ)のキーボードだけれど、英字配列のキーボードはJIS(日本語配列)のものよりもはるかに無駄がなく機能的。

まずエンターキーが小さい。それによりキーは左右対称とまではいかないがほぼシンメトリーに近い。これは見た目に美しいだけでなく、打つ時のストレスも少ないはずだ(当社比)。他に使い道のない謎の「半角・全角・漢字」キー「英数」キーもないし、圧倒的に手を動かさずに打ち込むことができるように設計されている(当社比)。

これはJISに慣れている方にとっては相反する意見だと思うけれど、一度英字配列に慣れてしまうとJISの野暮ったさにうんざりしてしまうことも。こればっかりは体験してみないとわからないし、個人差もあると思う。もちろんHHKBにはJIS配列もあるので、JISで徹底している方はぜひJISを選んでほしい。まぁ結局のところ、MacのパソコンをわざわざUSキー配列にするのと同じ感覚だと思う。つまりシンプルに「カッコイイ」ということ。アンチMacユーザーには鼻につくかもしれないけど、まぁそういうこと。

ただ、キートップに文字が印字されていない「無刻印モデル」については、英字配列にしか存在していないので注意が必要。個人的には、せっかくHHKBを使うのだから無刻印か「墨」モデルを選んでほしいと思っている(墨モデルは、黒の本体に黒の刻印がされているもので、印字が目立たない。こちらはJISもある)。

それから、十字キーにもトラップがある。必然と思われがちな十字キーだけれど、私が選んだHHKBには十字キーが付いていない。右手の小指でファンクションキーを押しつつ、近くにある特定のキーを押すことで十字キーの役割をさせるのだ。これこそが「癖が強い」「変態配列」と呼ばれる所以なのだけれど、これも慣れてしまうともはやこれでないと気持ち悪い。むしろ十字キーが存在しないからこそ生まれる、極限まで無駄を省いたミニマルさ・整理整頓されたビジュアルの美しさに、ほぼほぼ手を動かさずに十字キーを操れる便利さがAddされて相乗効果とも言えなくもない。

独特の打鍵音も魅力のひとつ。よく「スコスコ」と表現されるけど、これについて私はあまり納得いっていない。「スコスコ」言うかな?「スコスコ」言ってるのはきっとタイピングが遅い人か、ひとつひとつ丁寧に打鍵している人なのかもしれない。私のように子供の頃からゴルゴみたいな顔で打ちまくっていたキーボード奏者にとっては、キーを押す、という行為は粒じゃない。なんていうの、連打?連打が過ぎてもはやワンストローク終わらないうちに次の一手に出ている。それが延々続いているので、「スコココココ」って感じの打鍵音になる。

むしろ調子が良い時は、その連打によりキーボードの筐体が共鳴して「カランコロン」という音がする。う〜ん、これは説明がむずかしい。とにもかくにもこれはキーボードという名前の通り、楽器なのだ。

HHKBの打鍵音はこちらの動画をどうぞ。タイピングの癖はご愛嬌

そして打鍵音と同様、「打鍵感」にもなんとも言えない気持ちよさがある。キーボードって結局いかに触っていたくなるかが一番のポイントだと思っていて、それはつまり、いかにe-typing寿司打をやりたくなるか、ということなのだ。仕事でもないのに無茶苦茶にキーボードを叩きたくなる時がある。言い換えれば、キーボードを無茶苦茶にしてやりたくなる時がある。そう思わせてくれるのはこの子の打鍵感が病みつきになっているから。きっと。おそらく。

横から見るとキートップの形状が湾曲している。吸いつくような触り心地と打ち心地は計算ずく。

他にも魅力はいくつかあって、その中でもお気に入りなのが「愛好家が多い」ことや「マニア向け」なこと。なんといってもこのキーボード、とにかく書き続けることにストレスがない。だからこそ、物を書く人やプログラマーなどに愛好家が多いらしい。

個人的に特別お気に入りなエピソードがあって、それは、アメリカの超有名プログラマー兼ハッカー・リチャードストールマンが、自身のMacbook(ラップトップ)のキーボード上にHHKBを置いてタイピングをしているというもの。しかも彼が「尊師」と呼ばれることから、MacbookにHHKBを置いてタイピングすることを『尊師スタイル』と呼ぶらしい(それにしてもHHKBにまつわるネーミングはなんともダサい、うーんでも、それが逆にイイのかもしれない。なんだかそう思えてきたあなたは今すぐAmazonかビックカメラあたりでポチってほしい)。

尊師スタイル
尊師スタイル。Macbookのキーボードサイズにドンピシャなので干渉する恐れはない。
本体裏側には高さ調節のための足が。尊師スタイルにするときは足を収納しよう。

ここまで私の駄文を読んできてくださった方にまずはお礼が言いたい。ただし最後に、心して聞いてほしい。残念ながらこのハッピーハッキングキーボード(HHKB)は、とても高価だ。

私は確かAmazonプライムデーかなにかでちょびっとだけ安くなっていたところを狙い撃ちしたけれど、定価3万円〜3万5千円ほどする代物だ。いくらハッピーハッキングと言えどもこれに関してはアンハッピーと言わざるを得ない。でも、考えてもみてほしい。逆に1,000円のキーボードだったら、こんな駄文を最後まで読むのか?と。ここまで読んでくださったということは少なくともHHKBに興味のひとつやふたつあるのだと思う。そういった意味では、それほどの価値があるものなのかもしれない。

冗談はさておき、この値段には理由がある。HHKBは「静電容量無接点方式」と言われる数少ない方式が採用されたキーボードで、詳しい説明は他のメディアでされ尽くされているのでここでは省くが、とにかく長持ちする。一説には、1日1キーあたり1000回押したと仮定しても80年以上持つほどの耐久性なんだとか。なんじゃそれ。

つまりHHKBは、一生モノのキーボードなのだ。

「一生モノ」と言われたら避けようがないよね。うんうん、わかります。一生モノに弱いあなたはぜひともAmazonかビックカメラあたりで今すぐポチってください。その価値はあると私は思う。まぁ思わなきゃこんな長文書かないよね。

ということで、書き始めたらやっぱり思いが溢れて長文になってしまったこのHHKB。実はこれ、長文になってしまったのには他にも理由があって。この文章、まさに今、HHKBで書いてるんだよね。そりゃあゴルゴみたいな顔にもなりますって。

せっかくここまで読んでくださったのだから、ぜひともこのHHKB、もといハッピーハッキングキーボード、試してみてくださいね。

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